地域の建築士として
地球環境と建築とのかかわり
熱帯雨林とコンクリート打放建築
木造建築と炭素排出量
国産の木材使用とエコシステム
・次世代を担う「新木造建築」

地域の建築士として

東京からUターンして信州にアトリエ事務所を開設し、早17〜8年が過ぎようとしています。一極集中の都市部での設計環境から、森林面積が地域面積の86%を占める南信州の地域環境への移動であり、帰郷当時は地域の経済性・情報システム・ライフスタイルも含め大変気落ちしたものでした。


情報を何でも教科書としてストレートに受け入れた30代を過ぎ、40代頃からは地域の風土・伝統・文化というものを強く意識するようにと変わってきました。ここ10数年、私共の創り出す物は素材一つにしても「土へ帰す素材」を意識し、工法・施工体制にしても「地域の中の循環型物づくり」へと取り組んでいます。私共の名刺には「風土と建築」というロゴが入っていますが、私たちの創り出すものが末長く地域の方々に愛され、同化し、個性ある信州の建築 ・文化として継承されればいいと願っています。

阿智村浪合地区 「棚田の住まい」

日々の創作活動における素材への想い、工法へのこだわりの基点を地球環境意識の側面から述べてみたいと思います。


地球環境と建築とのかかわり

 最近、全世界的に地球環境意識の高まる中「地球温暖化」「オゾン層の破壊」「森林破壊」「酸性雨」等、耳にしない日は無いかと思います。地球環境問題は人間の産業活動の結果として引き起こされたものであり、先進諸国での ・・・・・ 私自身、先進国という言い方に大変抵抗がありますが ・・・ 経済的繁栄が資源エネルギーの大量消費、大量廃棄となり地球の持っている自然の浄化力を超えてしまった為と考えられます。
ここで私達の携わる建築産業について考えてみれば、建築産業は日本の国民総生産の約20%近くを占める大きな産業です。 そして成果物である建築は他の産業製品よりも巨大であり、資源エネルギーの大量消費の上に成立しています。

巨大な建築物を構成する基本素材は鉄とセメントであり、最近では多量のガラス類が目につきます。 これらは原鉱石に大量の熱処理を加えて作り出される、エネルギーのかたまりごときのものです。そして竣工すれば空調・照明・給湯等と常にエネルギーを投入して居住環境を維持していかなければなりません。 そしてライフサイクルの終わりに解体・除却される段階で大量の廃棄物を生み出すわけです。














また建築関連の炭素発生量の国全体の中で占めている割合は、資材生産において13%、建築現場での発生が1%、運搬で3.5%、実際の建物運用時の発生量が住宅と業務で16.5%で合計約34%になり、建築産業の活動により波及的に引き起こされるものを加えると、実に国全体の炭素発生の約45%が建築産業に関わっている事になります。


熱帯雨林とコンクリート打放シ建築

 地球環境問題の一つに「熱帯雨林の減少」があります。熱帯雨林は発展途上国ゾーンにあり、農地拡大や牧畜増加、炊事用薪炭量増加等によって森林が急速に減少しています。 熱帯雨林は多様な生物の宝庫であり、地球の気候システムに大きな影響を与えているので、その減少は地球規模の大問題と思われます。

ご承知の様にコンクリート打設時には合板を使用しますが、これが殆んど熱帯雨林材より出来ています。特に化粧打放シの時には、新材ばかりを現場で大量に使用しているのです。
型枠合板に使用する材料は特殊なフタバガキ科の大木であり、東南アジアの熱帯雨林にしか存在せず、再生も困難な樹種であり、今後10余年で地球上から無くなるだろうと言われています。 熱帯雨林の木材はまず産出国で燃料や商業用に消費され輸出量は3〜4%ですが、日本が最大の輸入国であり用途の大半が合板であるわけです。

これらの事情を考慮すれば、きれいに化粧打ちされた巨大なコンクリートの建築物を単に空間の美しさ・デザイン性だけで語ることは出来ないと思われます。


木造建築と炭素排出量 

地球環境問題の中で最も解決が困難とされているのが地球温暖化です。地球の保温性を決めている温室効果ガスの濃度が増え、地球の保温性が高まって気温が上昇するものですが、最大の原因物質は化石燃料を燃焼する時に発生する炭酸ガスです。 建設業でみれば、鉄鋼やセメント等の建設資材生産過程で、日本全体の炭酸ガス排出量の12.8%を発生しています。(前、円グラフ参照)
 
また建築の構造種別で炭素発生量を比べてみると、建築物が竣工するまでに排出する炭素量は鉄鋼・セメント・運輸の三者が中心である事がわかります。 一方、木造建築物では多量に木材を使用するが、素材加工に伴う炭素排出量は少なく、結果として建物全体の炭素排出量が少ないのがわかります。

また、木材自身は乾燥重量の半分が炭素であり、これは光合成によって大気中の炭酸ガスを木材に固定した結果です。 木材は加工時にそれほどエネルギーを要せず、炭酸ガス排出量も少なく、光合成で固定されている効果を加味すると、全体としては炭素吸収素材となります。 鉄鋼のように素材製造時に炭酸ガスを大量排出するのと比べれば、木造は圧倒的に炭素発生量削減に有利な建築物と言えます。

このような結果から考えれば、木造建築物を見直して積極的に採用を計る事がいかに環境に対しての順応的な手法かと思われます。


国産の木材使用とエコ・システム

 現在日本の国土面積は、3779万haで森林面積は2512万haであり、国土の66%は森林となっています。 これはフィンランド・スウェーデンについで世界で3番目の森林率であり、ちなみに世界平均は約30%です。 森は人にとって生きていく上で最も大切な、空気と水と食物を生み出してくれます。 木は二酸化炭素で汚れた空気を光合成によって浄化し、生き物に酸素を与えてくれます。 雨水は木の根元に残り腐葉土をつくり、栄養分や微生物を含んだ豊かな水となり、田や畑を潤し、海に流れて海草や魚の餌を豊かにします。
森林の持っている大気保全機能、水資源涵養機能、土.砂崩壊防止機能、野生鳥獣保護機能等を経済性に置き換えれば、75兆円に相当すると言われています。 しかし、日本の森林は、輸入材の伸長により今や手づかずの荒涼化した状態です。

日本の木材消費量に占める国産材の占有率は、18%まで減少しています。

現在日本の山林でストックされている炭素の量は、14億トンと推定され、年間1,600万トン相当の炭素換算率の木材が居住用に供されます。
一方輸入材として年間6,400万トンが国内の住居用に使われ、合計8,000万トン相当の木材が日本の居住用として使われています。

国内では年間120万戸の住宅が建設され、日本全体の木造住宅のストック量は、2,400万戸と推定され、これは20年分に相当し、4.8億トンの住居における炭素のストック量になります。
日本の全住戸数は4,000万戸位であるから、炭素換算ストックは、木造住宅の2,400万位相当します。日本の山林が蓄える炭素のストック量5,400万トンに相当するわけで、もう少しエネルギー消費を節約すれば、日本の山林のCO2吸収と住戸のCO2発生のリサイクルが成立する。



外国からの輸入6,400万トンをなくした時、日本の住居の償却年数を40年間とすれば、日本における炭酸ガスの発生量と山林における炭酸ガスのストック量もバランスよいのです。
ちなみに、世界の木材ストック量は273億トン、炭素の年間固定量は8.4億トンと推定され、33年の周期で木材を利用するとすれば、建築に関するエコシステムが成立します。
日本における木造建築の推進と山林の人工林の育成を行い、住居エネルギーの消費もバイオ・エネルギーへと変換すれば、建築に関するエコシステムが成立する訳です。


次世代を担う「新木造建築」

日本の森林の40%が人工林であり、樹種もほとんどが針葉樹です。 人工林は間伐、下草刈等の手入れをしないと成長しません。 30年〜50年で収穫期を迎える国産材のヒノキ・スギ・カラマツ等を育成しながら伐採するという事は、この様なエコ・システムを成立させる為に、大変重要な産業です。
森林の持つ防災機能、水質浄化面と合わせて、このようなエコシステムを成立させる為にも国産材の木材を活用した新しい日本の建築計画が重要であると思います。

近代建築三大要素が 「鉄・ガラス・コンクリート」 といわれてましたが、今やCO2発生の主原因になっている訳です。 地域の建築士として国内産の木造建築にこだわるのは、環境面から言えば、上記のエコシステムにある訳です。 近年木質ムク材の不燃化も可能となり、法的規制もクリアーしながら多用途に木質材を使用できる様になりました。 地球環境面からも、次世代を見据えた「新木造建築」に建築界全体で取り組み、CO2削減に努力すべきだと思っています。

全国優良木造施設木材利用推進中央協議会審査
 「林野庁長官賞」受賞  「かぐらの湯」


参考データ: 全国建築士会連合会 講習会資料より



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