由緒ある江戸中期から住み継がれた『本棟造』の改築工事でした。
良質な地域産材のヒノキ、スギ等をふんだんに使いながら民家型住まいに「数奇屋マインド」を加味しています。
屋根の軒先廻り、外部開口廻りディテール等、入念に考慮したものです。
信州産材の住まい
数奇屋の住まい Ks邸
東南面の玄関廻りです。現況の長屋をグルリと廻ってアクセスします。
信州の伝統民家の形態に、数奇屋の線の細さを加味してみました。
タル木・軒桁・柱材は南信州産の杉の磨き丸太材です。
玄関左側に見える地窓は、クローク収納の為の採光窓です。
南面庭から見た外観です。二百年以上生きつづける松、自治体から記念樹
指定された広葉樹等、地域を代表する旧家を感じさせます。
各開口毎に面格子のデザインを変えてみました。
親と子の格子の出巾を変え、陰影により格子の竪線にアクセ
ントをつけています。
玄関建具の詳細です。
銀杏面を取った横桟は、極限状態の細巾です。
杉磨き丸太材のタル木による二重天井が、上部
に見えます。
玄関ホールを居間方面から見てみました。
正面に見えるのがシューズクローク室で、三世代の大家族の方々でも、
玄関廻りはいつもすっきりです。
黒カシュー塗りのR状の飾り棚は、手摺を兼ねています。
正面の扉の奥が居間・食堂です。
暮らし易い生活感のある「南信州の数奇屋」の内部空間を意図しています。
玄関ホール正面です。
玄関框・式台・床板は無垢の赤松を使用しています。
天井からの光により、上昇感を引き上げられる階段ホールです。
手摺等は、建材を使用しないで感触の良い桧材を加工しました。
西面に抜ける廊下部ですが、正面に視線を低く抑えた開口部がみえます。
下地窓の奥は御両親の寝室です。
玄関脇の手摺も兼ねた黒カシュー塗の飾り棚です。
旧家にふさわしいシンプルな二間床です。
床の間は畳敷・床柱は天然の杉絞り丸太・床框は面皮カシュー塗、
脇床も黒カシュー塗です。伝来の品々も多数お持ちで、二竿掛けても
十分な広さです。
お住まいになって6年目… 居間・食堂から台所を見た光景です。
雁行プランによる北面からの二面採光・土蔵の白壁の間接光により、
一日を通して安定した柔らかな光の中での、三世代の皆さんの
談話が弾みます。
茶の間の床前には、障子越の和らいだ天空光が光を落とします。
水廻りの正面壁・床は自然石貼、壁面腰部は
自然割竹を張ってあります。
H13年1月竣工 木造2階 330㎡(飯田市)