医療・介護施設
泰阜村 高齢者共同住宅
通常的な高齢者介護施設の定型パターンから脱する事を考え、
高齢者が住み慣れた自宅的な終の住まいの中で一人一人が助け合い、
一つ屋根の下で新たな共同生活を送る「泰阜村・高齢者共同住宅」
の提案です。
中山間地域の里山風景に溶け込む「高齢者共同住宅」です。
豊かな自然に恵まれ、地域住民には「住み慣れた村で安心
して暮す」ための、都市住民にとっては「癒しのふるさと」
そして「終いの住まい」です。
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南信州南端人口2,200人の小さな山村「泰阜村」…全国町村
合併移行の中、自立を宣言し、村民の在宅福祉を進めている
事でも全国的に知名度の高い自治体です。
今回の「高齢者共同住宅」は、一つ屋根の下で新たな家族を
作りあげ、村の福祉をさらに質の高いものにしようという試
みです。一人ひとりがお互いに助け合う、真の社会福祉を目
的にしており、高齢者の介護、子育て支援、世代間教育、障
害者教育、地域住民の緊急避難所などさまざまな機能を持っ
た「住まい」です。
団体行動や画一的な生活を想定しない、各々が部屋毎に異な
る「個の家」に生活しながら自由に活動し、生活を共にする
「終の住まいの生活空間」を提案したものです。住宅の居室
に位置する南面にはタタミコーナー、交流ホール、食堂、サ
ンルーム等の交流空間が、高・低天井、空間の明・暗によりメ
リハリをつけ、多様な居場所を創出しています。
少し大きな個人の「住まい」を思わせる「高齢者共同住宅」です。
全て南信州産材の「ヒノキ」「赤松」「スギ」材で組み上げた、
高齢者に馴染み深い「里山の民家」のイメージ形態です。
南面からの全景です。軒高はあくまでも低く押さえ、屋根は3寸勾配のムクリ形
状で、『里山の民家のイメージ形態』です。
西面切妻ガラス窓部がサンルームです。
山砂敷の南面敷地は、今後入居の方々の菜園等に開拓、利用されていきます。
東面の玄関ポーチです。耐候性を考慮し開閉建具は鋼製とし、木製建具
の中に組み込んであります。
各居室には、野菜作り等の農作業に対応出来る様、農具
入れが設置してあります。
サン・ルーム前の木製デッキ上に、成長した植栽により夏期の日差し
をカットするバーゴラを配しました。
交流ホール南面部、木製バーゴラの夜景です。
採光を考慮した端部、ガラス越しに夜空が見えます。
H21年3月竣工 木造1階 630㎡(泰阜村)
東向きの全面ガラスの玄関ホールであり、朝日がサンサンと差し込んで
きます。低目のカウンター等、全て手すり兼用の機能を持たせてあります。
厚いムク板の、低目の腰掛ヶ用ベンチを左・右にセット。
高齢者の目に止まる様、「赤色の掲示板」を正面に
配置しました。
交流ホール手前が安堵感のある少し暗めの「タタミ・コーナー(1)」です。
あえて小上りとし、昔ながらの暮らしの形「堀コタツ」を設けてあります。
柱は丸太共、南信州産材の「ヒノキ材」丸太梁は「赤松材」で、全て
手加工した物です。
馴染み深い「里山の民家の木組み」をイメージしています。
サン・ルームから見た夕暮れ時の里山風景です。
長年住み慣れた風景が入居の方々に安堵感を与えます。
枝付き桧丸太背面は、入居者の方々の
「手作り作品展示スペース」です。
「薪ストーブ」の前での談話・憩ぎ・癒しを考慮し、本棚・収納を兼ね
た低い区画壁を設けました。
枝付丸太南面が、四季を通じて自然光の差し込む「サンルーム」です。
住み慣れた民家の「広縁」的空間です。
タタミ・コーナー(2)も、あえてバリアフリーにしないで、
1日に何度かは上り下りを行います。
入居者の方々の意思で、自由に居場所を選択出来ます。
ショートステイ(2)から交流ホールを視てみました。
換気・通風を考慮し、玄関引戸は格子戸と和紙貼フラッシュ戸の2組セ
ットしてあります。
タミ右面は板張りであり「思い出の家具」等持ち込める様、
配慮しました。
夫婦世帯(1)のタタミ8帖部屋です。各居室毎に白木仕上げ、民芸調
の着色仕上げ、天井面も船底・折上げ天井等、仕様を変え「個の家」を
演出しています。
単身世帯(2)です。引き込み・欄間等の可動建具により、
通風・換気も良く交流ホールと一体化します。
事務室内部から玄関ホールも、引き込みガラス戸により
一体化します。
収納部の建具には色彩を加え、高齢者に配慮しています。
カラフルなモザイク・タイル仕上による脱衣場の洗面
カウンターです。
要介護者も考慮に入れ、浴室にはバス・リフトが設置
されています。
交流ホールの核になる12,000kcalの薪ストーブです。
深夜電力による蓄熱式床暖房も配してあります。
障子戸により軽微に区画された小上りの
タタミコーナーです。
趣味活動等の部屋として多目的に使用されます。
玄関格子戸、下足棚脇に設置した厚い杉板による造り付ベンチです。
手摺は感触の良い、桧材を加工して取り付けてあります。
玄関に入ると、正面に高齢者の目に映りやすい、内壁が原色の
カウンターがセットされています。
交流ホール入口上部から、障子越しの柔らかな天空光が降り注ぎます。
細長い杉丸太材・R状のカウンター・腰板の見切形状等、
手摺を感じさせない様デザインしました。
各個室の出入口は、夏用の格子戸と冬用の和紙貼りフラッシュ戸と、
季節ごとに使い分けます。
枝付桧丸太の奥の飾り棚は、いつも花が飾られ美しく使われています。
南信州産の赤松丸太材を熟練木工の手間をかけた手加工により組み上げました。
今や貴重な伝統工法であり加工できる木工職方が高齢化しているのが現状です。
細い桧丸太材を加工し、手摺を取り付けました。
サンルームと玄関ホールに、桧材によるベンチを設置しました。
これも家具ではなく木工事です。